壊れたお人形が狂った戯言を吐き出す廃墟の世界

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死ぬ間際の風景を見ては
死を恐れる
最期の時を刻み付けるかのように
ゆっくり何枚も撮られる写真
写真を撮っている
死の間際のような精確さで
何気ない電化製品のボタンを克明に
連なるコードの束を鮮明に

綺麗な世界に住んでいないのは知っている

お姫様がある朝目覚めたら
天蓋から生塵
朝食から腐臭
鉄の兵士たちは模型
どんな定型を信じれば良い

お姫様がある朝目覚めたら
ふいに心臓がチクチクと痛み出して
いつもの綺麗な天蓋ベッドから転げ落ちて
扉の外のおいしそうな朝食の匂いに向かって
助けて、死にそうなの、と叫んで
駆けつけてきた生身の兵士たちに抱きかかえられて
前を向いてみたらどうだろう
最期に思い出すのは部屋に飾られた絵画ではなく
兵士の履いていた鋼鉄のブーツの錆が織り成す模様だった
それも美しく、震えるほど美しく思えた

錆びた箇所の法則という情報は
心臓を治す何の役にも立たなかった
どれだけ良いものだと位置づけしても
そうやって強く記憶させても何の役にも立たない

愛する対象にすることはできる

それはもう一つの物語の中
お姫様は突然痛み出した胸に恐怖を感じ
お父様の顔を思い浮かべながら家来を呼んだ
介抱されながらまだ死にたくない、だって
こんなにも世界は美しいんですもの、お姫様は
思いながら死んだ、世界を愛しながら死んでいった

分け隔てられた世界
綺麗な世界に住んでいないのは知っている

少女がある朝目覚めたら
目の前で人が死んでいた
昨日も死んでいるのを見た
その前の日も見た
死んでから幾年も経った人を今日も見ていた

少女の目の前にはたくさんのコードがのびていた
少女はコードに繋がれて生きていた
コードから離れると少女は二日で死んでしまうそうだ
あの少女はもう半分死んでいると囁かれていたが
その生き残った半分こそが少女自身だった

泣いても泣いても
何を恐れているのか
何を悲しんでいるのか
何との別れを寂しく思っているのか
何一つ分からなかった

分からない物を何故惜しめるのかも
一体自分の中の誰が何のために
生きることを求めさせているのかも
自分がどうして泣いているのか
何一つ分からなかった

少女はお姫様の物語を書いていた
綺麗な世界に住んでいないのは知っている
この文字に記されたお姫様がやってきたと思われる
綺麗な物はこの部屋のどこにもない
どこから来たのか分からないお姫様は
少女の遺伝子を継いで少女より先に死んだ
おそらくもっと早く生まれていて
再び生まれて そして死んだのだろう

少女は圧縮されるのも良いかも知れないと思い始めていた
考えても考えても何を恐れているのかその実体の輪郭さえ分からぬまま
ただひたすら恐れをなす感情だけが湧き出ていて
たとえ全てを解決できる日が来たとしても
足し引きしすぎて最期には
回答すら残らないぐらいに全てが本物の零になってしまいそうだった
少女は物語の上に圧縮されたいと思い始めていた
お姫様の魂の住んでいた物語の中で生きたいと思い始めていた
世界を愛し、嘆き、惜しみながら涙を流して朽ちていくほうが
何も分からない暗闇を手探りで生きるよりまだ楽かも知れないと思った

泣いても泣いても
何が自分を脅かしているのか
何が自分を悲壮な気持ちにさせるのか
何が自分に強く愛着を感じさせてきたのか
何一つ分からないままで

わたしはひどく怯えて
そして大きな声で泣き叫んで
「行かないで」と全てを抱きしめた
抱きしめたはずの場所には何も見えなかった
あったかのように錯覚させた一片の感触さえ
もうこの両腕の隣をすり抜けて行ってしまった

物語だけを完結させてはならない
肉体が死ぬより先に精神を零に導かねばならない

innna mean shellan

Wee apea ra herr chiess clare fluy,
rre rosa quen, rre fhyu tarfe.
Was apea ra uteu innna keenis grave rol iasien.
yeeel, yeeel, ware yeeel yanje dauan,
Was yea ra irs ween shellan rol fountaina omnis
li bautifal titil omnis ciel, rosa, fhyu,
lyuma, kapa, plina, omnis irs here.
hyear presia, omnis tarfe enerel here.

Wee yea ra herr ene fandel cyurio,
rre lyuma aulla, rre kapa yehar.
Was au ga pic innna keenis grave rol maen.
na crannidale hers, na khal noes,
Was i ga pic, na eterne omnis ciel rol rosa,
li rol fhyu, rre ptrapica manafeeze.
rol lyuma, rol kapa, rol plina, rol omnis ciel.
hyear presia, omnis tarfe enerel here.

Wee num wa herr yatse li parce mea,
Rrha jyel wa re gauzewiga ween gigeadeth shellan.
Was au ga cyuie innna ware houd wharn yor.
yeeel, yeeel, ware yeeel yanje ware ptrapile,
Was touwaka ra wearequewie nx frawrle.
rre li celetille plina re waath ween shellan.
rre li bautifal titil re ferda pitod mean.
hyear, omnis lequera irs enerel here.
innna mean shellan. here.

♥ 追記... »

氷細工の芽

逃げ惑うのに 疲れてしまったから
全て嘘ならいいのにと 思った
きらきら 鈴の音
雪解け水のような長くゆるやかに引き伸ばされた電子ピアノ
粉々に砕かれた雪の結晶を一点に固めて作られた電子ピアノ

歌声は踏まれた霜の
靴裏で溶けゆくさま
ひとつぶ ひとつぶ こぼれていくように


ただ何者にも おびやかされることなく
たった一息 ほっと息をつきたいの
六枚 真四角の板を囲ってみても
本当の独りは 本当の断絶は
本当の安全地帯はどうやったら作れるんだろう

どんなにきちんと囲っても
やがて訪れる朝
部屋を出たわたしを媒介にして全てが洩れ出てしまう
閉じた循環の世界が変化してしまう
そんな気がして


どこでもない世界でしか わたしで居られなくって
ここでのわたしは絶えず だれでもない人
あの日と同じ葡萄色の指
わたしは灰も被らず 林檎も食べず
しずかにマッチを売っていた

あの日に戻りたくない ただそれだけだった
凍えた天井に星は見当たらなかった
空のない夜 熱のない部屋
対してここは空のない夜 扉のついた部屋
その外にはいつでもベールのような黒く奥行きのない空
わたしと同じ平面に 一緒に佇んでいるかのような空

星の降るような鈴の音が
楽器ごと薙ぎ倒したように鋭く一度鳴り響いて とまった
ゆれる歌声
掠れ切った さみしげな歌声


危機がなければ 幸せで 善良でいられるのに
停滞も退化も 忌み嫌うのは全て迫り来る災厄のため
それすらなければ やめよう あるんだ
確かにここにある どれだけ時が過ぎても
人が移ろっても 町が栄えても 必ずそこにある


それでも熱に浮かされたように
ぼーっと物語に心を沈めたくなる時がある
名もない童話にかぶれて 目尻にほんのりとした熱
そうか 熱があったのか

熱が 走馬灯のように
懐かしい感覚を掘り起こしては
氷のように閉ざされた心の中から
種が芽吹くようにそっと顔を出して
雛の濡れた震える小さな翼の
しとやかな羊水の涙がこぼれて
そのまま寒い外の空気に感化された
この冷たい部屋の中で 凍る

なにもかもが美しく見えてしまう不思議
だから だめなんだと思う きっと

雪解け水のような長くゆるやかに引き伸ばされた電子ピアノ
粉々に砕かれた雪の結晶を一点に固めて作られた電子ピアノ
降り注ぐ星の金貨が遠くの山々に蹲る少女に散りばめられた時の鈴の音
空気の震えを敏感に反映しゆれてゆれていくなだらかな歌声

どこか遠くの夜空の大気や優しい夜風のように
宇宙を模しながらあらゆるものを包み込むシンセ

冬のコンクリートの上で立ち止まった少女のブーツが鳴らした
よく響くたった一度きりの靴音

始まってすぐから終わる間際までこっそりと鳴り続ける
電気式の熱暖房に似たノイズ

穏やかで寂しくて悲しい旋律に声を震わせるようにゆれて
ゆれて ゆれて ゆれながら歌う歌声


果てしのない夜 マッチを売っていたわたしにも朝が来て
葡萄色の手足を切り落としたら 健やかなる昼が来た
もう大丈夫だよ 悪いところなんてないんだよ
名もない童話にかぶれて
名もない童話にかぶれて わたし
隙間のない仮面の凍て付いたひびの中から
思い出したばかりのあたたかな心のぬくもりを溢れさせては
やがて凍ってしまうけれど
それがわたしの痕跡

その全容

肉屋のレジ裏の木箱の中に詰められている
四肢を切り離されて二日経った日輪の断面
髪を一房革張りの会計のトレーに出す
理科室の筋肉の模型のような
水気とリアリティのない肉切れを二つだけ
茶けた紙袋に入れて買って帰り
開け放された肉屋から出て街を歩いていると
誰も居ない午後の目覚めが待っていた

毛布の下には夥しい数の針が敷き詰められていた
あまりにも細いため痛みすら感じることなく
膨らんだ二の腕とわき腹に無数の針が埋まっていた
稚魚の背骨のように点々と描かれたどす黒い模様
傷跡から緩やかに噴出して固まった小さな血液の山
知らぬままに私は浴室に足を運び
曇った鏡越しに腫れて染まった瞼の色を確認していた

愛せぬものは愛せぬ
実に気味が悪いものだ
素手を使って食べた洋菓子から香る乳臭い香り
舌の上で柔らかな砂利を撫でている
奥歯の下に一粒が転がり落ちて消えた
殺しても殺し足りない時は
まだ殺してないと言うのが良い
注ぐ手を止めてはいけない
痺れる舌がどれほど痛みを訴えたとしても
忘れたいのだ いいや新たに思い出したいのだ
愛せぬものは愛せぬ
私達は愛しているふりを懸命に探している
回路の変容という外傷を伴うほどの醜き光景を
悲しく追体験すべく
褒め讃える言葉を見つけ出そうとしている
その一方で私達は何度も殺している
殺しても殺しても殺し足りない時は
笑顔で夢を見ながら
初めて殺意に気付いたあの日の感動を
擦り切れて無くなるまで一心に思い出している
注ぐ手を決して止めることなきまま

ある日の木箱の中身は二日前と変わらず汚れていた
あれほどまでに汚れていると思っていた木箱の中身の
あまり変わっていない様を見て案外汚れていないと思い直した
膿と見違える虫の数だけがほんの少し増えていて
店の誰もが箱の中身の事など気にもせず肉の選別をしていた
それはそのはず無臭だった
そこにリアリティはなかった
このまま持ち帰っても誰も気付かないだろうか
レジの裏は妙に空っぽで整然としていた

私の腕の模様を見とめた少年が叫んだ
「あの子、ほんとは泣いてるよ!」
悲しい追体験は身体や神経が望むまでもなく
当たり前のように毎日眼前で繰り返されていた
肉付きすぎた白い腕を点々と彩る
小奇麗に並んだ赤紫色の一列の瘡蓋に爪を深く立てて
そのまま肘まで引っ掻いて見せれば朱色の血液が
ふつふつと余りにもゆっくりと溢れては丸く腕に張り付いていた
その部屋には一酸化炭素の心地良い匂いが充満していた
クリスマスのイルミネーションの光の中に帰ったように
温かな一杯のチョコレートを夢見ながら私はビール瓶に手を掛けた

それはそれは長い夢だった

自堕落な昼下がり
血の滲んだ絆創膏の数を数えている
皮膚の切り取られた下の甘い色の肉の上に
走る真っ赤な毛細血管の行く末を眺めている
無気力な昼下がり
一向に排出する気配の無い左腕を撫でている
新しい瘡蓋の連なりに極薄い感心を送っている
棘を掻き鳴らした様なエレクトーンの音色に森を思っている
あれから夢は覚めて倦怠と平和が訪れた
夏の様な視界だけが残って目の前を静かに揺らし続けていた

他者というおぞましき性質が鏡の向こうにも宿るのだろうか
鏡の無い部屋でそれを確かめる事は永久に出来ないだろう
今は木箱の中よりも丹念に使い込まれた白い大きなまな板の上
湿った冬の誰も起きていない室内の空気の中の事にほんの少しの興味と
ショーケースの中身が須らく魚に入れ替わった肉屋の夢の続きを描き出す
それは先ほどのリアリティの無い乾いた商品とは余りにも対照的な
生々しい鮮やかな光を反射する鱗の削げた白
木箱の中身は空で
店の奥から骨を割った様な包丁の音が響いてくる
自堕落な昼下がり恍惚としてその音を聞いている
毒のような色をした腕の中の針も溶けるほど
陶然とした時間が臨終宛ら
死んだ様に澱んだ真昼の中を
ほんの僅かずつゆるやかに、ゆるやかに流れていった

寝台と言わずあらゆる所に真っ黒な針が植物の様に生えていた
靴底や手すりや椅子全てがびっしりと覆われていた
痛みは全く無かった
痛みが無くとも、痛みが無い事によっても不快を覚えたその昼
陶酔の喜びや、殺意の尊さにも飽き飽きしてきたその昼
「ほんとうは痛いんでしょう」と嘘ばかりを言う少年の首を捻って
「それならどれだけ良かったか」と道路の上で泣き崩れた
物欲を超えないのは人もまた物であるから
まな板の上で寝息をたてているのは矢張り物だった
針はどれも幻視だった
見ろと押し付けられて仕方なく見せられた幻視であった
本当はそんなものは無かった
回路の変容という外傷を伴うほどの醜き光景を
正しく消化させる為の正しい痛みの感じ方を
ただの幻視から幻痛までへと昇華できなかっただけの事
瞼に注した朱色だけが私の真実だった
浴槽の中でやわらかくふやけた肉が横たわっている
恍惚は長い時の中をゆっくりと点滅する様にふいに訪れて
またふいに馬鹿らしくなって詮を抜く
また乾いた昼下がりがやってくる
窓を開けてみたの

物置の向こうに花の無い薔薇の茂みが見える
口の中にバニラチョコレートが溶け残っている
物置と薔薇の茂みとその奥の枝々に切り取られて
ほんの僅かに真っ青な空が塗りつぶされている
ああ 雲も無く
麗しき真っ青な昼下がりよ
倒錯は一酸化炭素の見せたまやかし
現実から立っている苦しみを引き算した
美しい情景でも綴っていればそれでいい
本当に悲しいのは
ついぞ知れぬ夢
僅かにその合間を縫った凄惨の
冷炎の夢

悲しめぬものは悲しめぬ
乾いた舌に張り付いた砂金混じりの干からびた泥
実に気味の悪い変容
移り変わることが常となったものの
移り変わりを悲しめるだけの心が無い
それが過去それだった物という認識すらできないのだから
知っている人が消えて
知らない人が現れるだけ
悲しめぬものは悲しめぬ
その分離
わたしは片目で清らかな少女趣味に彩られた
庭を眺めながらもう片方の目で壁に色を塗っている
肉体から流れ出す液体は肉体の大きさほど有って
流れても、流れても、止め処無く

愛せぬものは愛せぬ
本物の賞賛を幾つ視界から掴み取って贈れど
未だ賞賛されぬ部位、無言そのものが意の介せぬままに
静かに少しずつ相手を侮蔑し始めている
見つけても居ない正しい褒め言葉を発話できない
自分でさえ理解できない
何が愛せぬというのか 一体何が

(よく見過ぎたアルゴリズムの一種)

私達が知りもしないものを
見たことすらないものを愛しているふりを懸命に探している


夢の終わり

悪罵の台詞の最後の文字と
同時に訪れた目覚め
時計が零を二つ刻んでいる
起動するコンポの液晶の藍鼠色の光が
閉ざされたままの瞼の上を通り抜ける
夢の終わりより目覚めの方が早かった
言い切った台詞の後の隙間に潜りこんで来る
一瞬の感情はより良く辻褄合わせされていた
目覚めたのだからそこで終わるようにと

今朝魂を信じた
正しくは肉体、現実との別離を確信した
耳元に届けられるかなしい震え
「肉体という船の果敢さを信じます」
そう言って流した涙も起き掛けの微調整
こちらの世界に生まれてきて良かった
何も案ずることは無い 成る様に成るだろう
今までも何度もきちんと繰り返されてきた
素質がある
「果敢さを信じています」
永遠の責め苦など決して存在しない
食い扶持を減らす為の仮想概念「集団」
それは私でなく自分が知っている
揃って歪む琴の音色
こちら側の世界に生まれてきて良かった

今朝魂を信じる人との齟齬を感じた
彼らは彼らの願いを魂に付け加え過ぎていた
現実はあくまで外側にあった
私にとっての現実は私だけの物だった
魂の寿命はせいぜい八十年が良い所だった
客観視された後の今朝の夢の内容に怯え
客観視する過程で剥がれ落ちた憤りが
記憶に捨てられて胸の内で燻っている
書き記す間だけ遅れて手渡される物語の中が此処
肉体は絶えず執筆する
より良く辻褄合わせされていた感情の一つ一つが
意識という世界を模した舞台で表現される
あれだけ厭わしく感じていた切捨ての美学の元に
私が作られていたことに吐き気を催す
嗚呼 なんて 塩分や
糖分が心地良いのだろうか 吐きそう
正しく回れ
私達には無事を祈ることしか出来ない

wmh.d

世界は回る 国々は傾く
砂がこぼれるように一粒ずつ
砂でしかないわたしたち
落ちていくだけの砂時計
ただどこかが悪いのではなくて
流れに沿って落ちていくだけ

崩れる社会という幻影に
「死なないで」と囁きかける
差し伸べるのも
差し伸べられるのも一粒

わたしはあなたたちという幻想が
これほどまでに強みを持っていても
あなたはわたしたちという幻想は
闇の底に落ちていく一粒の砂の
一点の光から漸く見出されるばかり

天を忘れて 傾きを亡くす
こぼれるのではなく
進んでいるのだと遠くの人は言う
その通りだと僕は思う
自由になりたいのは
健やかに生きる為
恒久不変の
自らを捕らえる物から離れよ

たった暫くの間
行って参りますを言おうと
そう聞こえたのは
ただの聞き違いで
本当は暫くの間のさよなら
僅かな安楽と帰省
差し伸べるのは
一粒の半分と 誰か

「こぼれるのではなく  進んでいるのだ」
どちらでもない ただ落ちてゆくだけなのに

森の外でのお話

さくらんぼとハーブティー
皿の上で繕われ
大きな体感施設の入り口
今度仕事で行くの
割れそうにやわらかな薄荷の紙
舌の上で溶けるから

全てが来るのが遅すぎた
全てにおいて生まれたて

おはよう御座います
殺意に歪んだ口元は
殺戮者でなく預言者の物
天から降り注ぐ啓示
それはただの形だったの
だから
形どおりに切り開いたキャンディ
壊れてしまいそうな桃色と紅色
硬く、透きとおる

知の範囲と一固体の立場の
重なる部分は矛盾
妥協で削がれる利点
人間が動物の延長であるかのように
運ばれるように流水
見にいくつもりで
そっと流れに任せる

そう、脳は悟りの森の木々に深く閉ざされ
目だけが借り物
皆と同じ物
流れていくのを見ている
研ぎ澄まされた六感が足を動かす
手先の幸せな痺れ
期待を上回る不安とともに時を刻む
家でさくらんぼの切り口に似たもの
思い出して
幸福に浸る
時にそれは黄色くて

ただ居ない人の影を待っている
目に見える物から見出そうともしている
わたしは待ち続けている

摩り替わるアクセント
同一化
響きが相応しい
ただそれだけのこと
呼び焦がれた厚い雲
心地の良い空気とともに
自らの
ささやかな転落を思い出す
それは数少なく
反比例 曲線 決して対象的でもなく
相違を認めただけ
僅かに

全てが来るのが遅すぎた
全てにおいて生まれたて
生まれる前の彼方が
いつもわたしの傍に居る

命の危機の一点に収縮せよ
その金属の重みを 数字の並びを
全てを一点に収縮させよ
声がする
紙が舌下に溶け終わった後の幸福
抉れたさくらんぼに似た何かのような
たった一つの真実

心臓から四肢に広がる逆の麻痺と
滑るように進んでいく手順
この与えられた目で
見たものを決して忘れないで
それなら
今晩丁寧に切り離す
わたしの森で切り刻まれる
さくらんぼの中
空洞で
ありませんように

自覚無き皮を纏え
剥いだ他人の皮膚を皮膚とせよ
赤の他人の重すぎた皮を

仕立て屋を探して旅に出ます
身から出たものはないのか
何もない この震える肉の下にも
多分何もない

箱の中の幻想

湧き上がる命の熱だけが作りを変えていく
何れ無秩序の宿で武器となる
刺し殺すのは 幾年過ぎた後

時の救いより早く滅びは訪れる
それは持つ剣のない素手によって齎される
無力であるがままに


その乖離に道筋を探る
自らの皮膚を乗せて解剖を進める
したたる血も 今は意味なきこと
それはただの私の声

誰がその命を与えたのか
眠る幼子の這い出た胎盤を探す
着せ替えられた服は腕と足に癒着して
心臓は産まれたままの色形

徐々にあらわれる澱んだ中身の波
一削りごとに赤くさざめく 鼓動のままに

血の通わぬ
何ら運ばぬものたちよ
聞き飽きた叫び
全ては同じ
血管の内側に引かれし赤い線
まるで通っているかのような偽造
心臓の中に特異な物が眠っているのと
信じていた
使い古された叫び
全ては同じ

箱の中に幻想
それでも目に見えたものは本物

そしてそれは目で見ることしかできない
それ以上の何物でもなく
それでもまた

子供たちというものは皆同じ顔をしている

嵐の前の回想

来たれ災厄よ
愛しき旋律を胸に
我が明日の喜び
尊き眠りの
太陽の出でし永遠の夜

滅ぼせよその罪
私は幾年でも待っている
絶える事無き記憶は
一人につきたった一種類

居眠りとソーダの造花
別れの挨拶の一突き
胸から真っ白な濁った血
あなたにはまだ見えない

滅ぼしに行く罪は
夢の中の処刑と共に
実体は何処か
死した者にも
狂った者にも
知る術は無く

人には癒せない寂しさ
窓辺から小鳥の葬送
大切な中身を溢しながら
明日に撃ち落されぬ内に

来たれ災厄よ
人に解せぬ旋律を此処に
我が明日の尊き眠り
蘇る原初の音
わたしを産み出した所へ
帰り行くかのように

窓辺から小鳥たちの群
失った物だけを求めている
罪という形に閉じ込めたなら
今に繋げられるのだろうか
袖から昨日の昼餉の香り
おやすみ
明日へと眠れ

一瞬と六滴の雨粒

すすきのゆれる
断続夢と目覚めの終わりで
ここはどこ 切り取られた時間
うしみつわたしの ぽっかり浮かんだ時間
幸せはいつも断片
不定期昨日と明日の狭間で
ここはいつでもない場所 明日の来ない場所

幸せはいつも此処に
ススキ野ゆれる
春の朝のような割れてしまいそうに脆い空と
シャボン玉越しに覗いたような世界
一年に一度しか訪れないわたしを抱く手
秋の夜の優しく静かな
歩くわたしの腕をすり抜けていく電灯色の風

どうして泣いているの
明日に流す為の涙を精製する肌の下
涙腺静脈の真っ黒な鼓動
幸せはいつも断片
すすきのふわり
金色の丘で
わたしが実り たったひとときの収穫祭
一夜にして嵐が全てを無に帰す
それでも 讃えよ

ここはどこ
切り取られた時間
わたしはだれ
切り離されたわたし
どうして泣いていたの
それは痛みを伴うの
今日が祝祭 今日だけが幸せ
この延々と連なる日々の
繋がりを失った断片である 今日が

ざらっと音を立てて

残り雨 さあいらっしゃい
不均一なその身のあらわしで
鼓動の音すら狂わせて 隠して
ちゃんと隠して 腕何本分の差
裸足の足のあたたかみを求めているの
末端神経に毒が回る 幸せの毒が
讃えよ

夢に見た空は今日もとても澄んでいて
ガラスの向こう側のようにぼやけてた
幸せはいつも断片
幸せの街はいつも涙の淡い膜越し
幸せの花はいつも滲んだまま微笑む
流れて混ざる色彩 もう思い出せない元の色
ゆれて ゆれて
金色の光のその丘で
太陽は飾り わたしは実り
ひび割れたガラスの隙間から覗く
本物の空は忌まわしき怖い色
削った粉のような雪
ガラスの内側できらきらと
幸せはいつも此処に
夜は部屋 切り離された黒い部屋
収穫祭はたった今日の一日だけ
明日の嵐は全てを無に帰す
それでも

揺られてる内に
明日は来るけれど
ここはいつでもない場所
明日の来ない場所
だから大丈夫よ、って
誰かが
傍にいて

わたしを隠して 
どこかへ隠して
明日に連れ去られないように
次の祭まで
雨音よ
わたしを



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